• 理事長あいさつ

    理事長

    当機構は、我が国における「青少年教育の振興」及び「健全な青少年の育成」を目指し、海・山・川の自然あふれる27の地方施設(国立青少年交流の家・自然の家)と、東京都に都市型の青少年教育施設である国立オリンピック記念青少年総合センターを有し、自然体験活動や集団宿泊活動をはじめ、伝統・文化芸術、国際交流といった多様な体験活動の機会と場を長年にわたり提供しています。

    また、国の政策実現に向けた取組として、SDGs達成の担い手を育む教育である「ESD(持続可能な開発のための教育)」の推進や国土強靭化への対応、地域との連携・協働の推進による地域貢献等の取組も進めています。


    現代の青少年を取り巻く環境は、技術の進化、社会の変化により大きく変化しています。

    文部科学省が実施した「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、令和5年度の国立、公立、私立の小・中学校の不登校児童生徒数が約34万6千人いるということが調査結果として示されています。

    調査結果を踏まえてみても、不登校や児童虐待はもちろん、子供・若者の貧困、精神的な負担の増加、教育・体験格差など、現代の青少年が直面する課題は多岐にわたっています。

    体験活動は、豊かな人間性、自ら学び、自ら考える力などの生きる力の基盤、子供の成長の糧としての役割が期待されています。特に、リアルな体験を通じて得られる学びや気づきは、子供の自己肯定感・自己有用感を向上させるとともに、自らの可能性を発見し、未来に向けて力強く歩むための大きな力となります。

    当機構が実施した「青少年の体験活動等に関する意識調査(令和4年度調査)」の結果では、自然体験が多い子供ほど、自己肯定感が高く、自律性・積極性・協調性といった自立的行動習慣が身についている傾向があることなどが分かっていますが、コロナ禍を経て子供の自然体験が更に減少していることも分かっています。

    加えて、人工知能(AI)の急速な発達は、私たちの生活や教育の在り方に大きな変化をもたらしています。現実の体験が仮想体験に置き換えられたり、直接的なコミュニケーションの機会が減少したりするなど、特に子供たちにとって、社会性の発達が阻害される懸念もあります。

    社会が移り変わる中であっても、当機構に求められるのは、職員一人ひとりが現場を把握し、社会全体的な「体験の機会」を子供たちに限らず、広く青少年、大人たちにも提供し続けていくと同時に、「リアルな体験」の重要性を広く伝えていくことではないでしょうか。

    AIと体験活動を対立させるのではなく、両者をバランスよく活用し、様々な体験を通じて自己肯定感や社会性を育み、人とのつながりを取り戻していけるよう、多様な体験活動の機会を提供していけるよう尽力してまいります。

    当機構のビジョンである「青少年一人ひとりが幸福を追求できる持続可能な社会」の実現のために、7Cs(7つの行動指針)の下、「誰一人取り残すことなく、全ての子供たちに良質な体験を提供すること」を職員が一丸となって目指してまいります。

    今後も、学校をはじめ、様々な機関・団体・企業等、そして地域の皆様ともさらなる連携をしながら、より多くの青少年に安全安心な教育環境を提供し、青少年教育のナショナルセンターとしての機能の充実に努めてまいりますので、当機構の事業運営にご理解・ご協力をよろしくお願い申し上げます。