野生動物にやさしい写真の撮り方~自動撮影装置の方法など~

野山や水辺に息づく野生動物のたくましい姿は、私たちに「生きる力」を見せしめ、感動と発見を与え、生きることの大切さを教えてくれます。厳しい自然環境の中で生きる彼らの姿に心惹かれるのは、私たちが忘れかけている何かを彼らがしっかり持ち合わせているからなのでしょう。

ここでは、彼らの自然な姿を写真に収めるためのヒントと彼らの生活にできるだけ負荷を与えないアプローチの方法を紹介します。

ヒント1 「けもの道」や「水場」への仕掛け

動物たちは山中を移動する時に決まった道を利用する場合があります。時にそれは人間も歩く林道や山道であったりします。足跡や糞などのフィールドサインを頼りに、「けもの道」をたどって自動撮影装置付きカメラをセットすると、人間がカメラを持って待ち構えていない分、道を歩く野生動物の自然な姿を写真に撮ることが可能です。また、野鳥などは特に乾燥期、浅い水場に集まることがあり、入れ替わり立ち替わり水を飲みに来たり、羽づくろいのために水浴びをしたりします。そういう場所を見つけてそっとカメラをセットするのもいいでしょう。

自動撮影の装置は市販されているものもありますが、ホームセンターなどで売られている防犯用のセンサーをカメラの自動巻き上げ装置(モータードライブ)に連動させる方法(注1)もあります。この撮影方法では、野外に機材を長時間据え置きにするため、風雨や湿気などから機材を保護することが必要です。ビニール袋で覆うなどの簡単な処置より、精密機械であるカメラやストロボは防水効果のあるハウジング(注2)に入れた方がいいでしょう。自分は大型のタッパーや防湿庫を加工して使っています。カメラやストロボに供給する電源についても一工夫する必要があります。できれば、1週間程度の継続供給が可能な電源(例えば自動車用のバッテリーなど)を用意した方がいいでしょう。

無論、機材をセットする前に、地主さんとトラブルを起こさない事前の対応は必要です。

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写真1
自動撮影装置と「けもの道」
(カメラのレンズ:85mm F2.8、ストロボ:ガイドナンバー40)

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写真2〈2004/11/09 10:08〉

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写真3〈2004/12/03 5:17〉

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写真4〈2004/12/06 2:26〉

上の写真は、国立赤城青少年交流の家あかぎ自然学校近くの山林に仕掛けた自動撮影装置の様子〔写真1〕です。11月に設置したところ、オリエンテーリングを楽しむ利用者の姿〔写真2〕の他に、12月初旬には「けもの道」を行き来するテン〔写真3〕やタヌキ〔写真4〕の姿を撮ることができました。テンは何かをくわえて運んでいました。タヌキは赤い舌を出しながら歩いていました。他に逆方向へ向かって歩くタヌキの後ろ姿も写っていました。人間も動物も出会わないように時間差を設けて、同じ道を共有して使用しているということでしょう。同じ環境に生きながら共存共生するありようがうかがえます。

注1 防犯用のセンサーをカメラの自動巻き上げ装置(モータードライブ)に連動させる方法

ホームセンターなどで売られている防犯用センサー(赤外線を使用した温度差を感知する人感センサー)の中には、アラームや照明と一緒になっているものの他に、それらとは別売りになっていて、外部機器のスイッチに連動させるための端子が簡単に引き出せるようになっているものがあります。それをカメラの自動巻き上げ装置(モータードライブ)のレリーズ端子から引き出した線と接続し、連動させるのです。誤作動やタイムラグはあるかもしれませんが、このような方法でも案外正確に動物を感知してくれます。

注2 ハウジング

自分の場合は、大型のタッパーや防湿庫を利用して、カメラやストロボを保護してます。窓をくり抜き、透明のアクリル板かガラス板を貼りつけ、必要に応じて、それぞれを接続するコード用の穴をあけてあります。その他には、バッテリーを格納しておくために大きなアイスボックスを利用しています。

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写真10
大型のタッパーを利用したストロボ用のハウジング

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写真11
カメラの防湿庫を利用したハウジング
(前面にはフード用に塩ビのパイプを取り付けてあります。)

それぞれのハウジングの接続を簡単に示すと下記のようになります。

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※変圧器:自分は12Vを6Vなどに変換する車用の簡便な変圧器を使っています。

ヒント2 アプローチの方法(無関心の「ふり」とひたすらの「待ち」)

獣や野鳥の写真を撮影するためには、望遠のレンズを使用したり、被写体の動物に接近したりすることが必要になります。望遠レンズは焦点距離が400mm以上の、できるだけ明るいレンズ(F値が小さいもの)がいいでしょう。当然ながら、警戒心を起こさせないための配慮や工夫も大切です。ここでは、アプローチの方法として、無関心の「ふり」とひたすらの「待ち」を紹介します。

無関心の「ふり」とは、動物たちに関心がないことを装って近づくことです。いかにも獲物を狙うように動物たちにレンズとカメラを向けながら強引に近づいてはうまくいきません。目立つ色の服装や音出し、いかにも「ヒト」らしい動きなども当然控えた方がいいでしょう。案外車に乗ったまま、無関心の「ふり」をして野鳥などにアプローチすると、思った以上に近づけることがあります。

また、時間と忍耐力がある場合には、車やブラインド(小型テント)の中でひたすら待つことが有効な手段です。運がよければ、かなり近くまで動物たちの方から寄ってきてくれることがあります。

数年前、冬の河原でブラインドに籠もっていた時、ヤマセミ〔写真5〕がブラインドの上にとまってくれたこともありました。頭上でヤマセミが横歩きする足音を聞いてうれしくて興奮しましたが、その時写真を撮ることはさすがに無理でした。つい最近(12月中旬)田畑を貫くように流れる川のほとりでチョウゲンボウ(♀)を見つけ、車で近づきました。

〔写真6〕は20mほどの距離から撮ったものです。チョウゲンボウが去った後も同じ場所に停めたまま、車中でしばらく待っていると、1時間後に今度はハイタカ(♀)が飛んできてくれました〔写真7〕。

「ふり」を装うにしろ、「待ち」に徹するにしろ、事前に被写体になる動物の行動を調べておくことは本当に大切です。同じ種でも行動に個体差や地域差があるようですので、地道な観察データが役立つことは言うまでもありません。また、むやみに近づきすぎて、動物たちが警戒するようであれば、すぐに引き下がることにしましょう。繁殖場所近くではなおさらのことです。

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写真5

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写真6

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写真7

〈5は栃木県那須町にて、6,7は栃木県大田原市にて撮影しました。〉

おまげ ライブ中継の試み

赤城青少年交流の家では、野生動物のライブ中継を試みています(2004/12/19現在)。10月中旬所内のヒマラヤスギにムササビのねぐらを見つけ、彼らの外出中に屋外用の防犯カメラ(防水)を据えつけてみました。「彼ら」と記したのは、親子と思われる2頭が一緒にいたからです。ねぐらはムササビが通常使用する木のうろではなく、何かの古巣を利用した皿巣型なので、巣の上方から見ると中の様子がよく分かります。ムササビがこのような場所をねぐらにしているのは大変珍しいと思われます。昼間はずっと寝ているようですが、日没直後に起き出して闇の中に消えていき、未明に戻ってきます。

ムササビのねぐらがあるヒマラヤスギは通路沿いにあり、すぐ下を利用者が通ることもありますが、今のところ居心地がいいようで(他に安住の場所がないのかもしれません。)昼は平然と寝ています。利用者の皆さんも無関心の「ふり」をして、暖かく見守って下さるので、しばらくは子離れもせず、とどまって暮らしてくれるかもしれません。

カメラは防犯用のカラー仕様ですが、暗闇では赤外線のモノクロ撮影が可能なCCDカメラです。その映像はモニターとして玄関ロビーのテレビに接続してあり、利用者の方々に公開しています〔写真8,9〕。

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写真8
〈2004/12/19 16:10 就寝中〉

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写真9
〈2004/11/01 17:20 活動開始〉

 

平成23年6月現在、センター棟研修室でモニターできます。

  ダウンロード用PDF

   野生動物にやさしい写真の撮り方~自動撮影装置の方法など~(PDF/274KB)

情報提供

国立赤城青少年交流の家

2004年作成

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